vol.4  空き住戸が「学生シェアハウス」に! 住みながら地域活性化に貢献

空き家の増加や高齢化など、さまざまな課題を抱えている明舞団地ですが、その対策はリノベーションの推進だけにはとどまりません。今回は、「学生シェアハウス」の取り組みについてご紹介します。

 

地域の大学と連携し、
住民と学生との関わりをつくってきた

明舞団地では2009年頃から、兵庫県内の大学と連携し、団地再生のためのさまざまな取り組みを行ってきました。明舞団地内の商業施設の空き店舗に「明舞まちなかラボ」を設置し、ゼミや公開講座を開催したり、夏祭りなどの地域行事に学生が司会として参加したりと、学生と明舞団地の住民がふれ合う機会をつくりました。
当初は兵庫県立大学の経済学部との取り組みでしたが、後に神戸学院大学の総合リハビリテーション学部も参画し、「明舞まちなかラボ」の取り組みは福祉の分野にまで及び、参加する学生もしだいに増えてきています。

明舞団地をフィールドにした大学の授業。学生たちも参加し、学生目線での企画を提案します

そんな中、住民側からの提案をきっかけに2011年から始まったのが「学生シェアハウス」。従来は、公営住宅法の定める入居者条件の枠に当てはまらないため、県営住宅では学生の一人暮らしやシェアハウスは認められていませんでしたが、2007年に新たな法律ができたため、公営住宅の目的外使用が柔軟に。明舞団地では、2010年に「学生向け住宅」の案を地域再生計画に盛り込み、内閣府の承認を得ました。

 

一番の目的は「地域貢献」
入居学生が自治会副会長に!

団地内の空き住戸に学生が入居する取り組みを行う団地は他にもありますが、明舞団地の特色は、単に「空き住戸を埋めること」ではない点。一番の目的はあくまで「学生による地域貢献」と定め、学生の数を集めることよりも、自治会に参加し、団地での活動に積極的に取り組んでくれる学生を選考しています。

審査会の前に、シェアハウス物件を見学。

入居を希望する学生はまず説明会に参加し、住人となった際に担う役割を認識。応募後の審査会では、学生が入居後の自身の活動計画をプレゼンテーションし、審査員でもある自治会の役員たちと、納得のいくまで対話を行います。

審査会では、入居志望や入居後の明舞団地での活動についてプレゼンテーションを行います

はじめは、4戸8名という少ない定員ですらなかなか埋まりませんでしたが、「地域貢献」という意識をしっかりと持った入居学生たちは、自治会の会議や草刈り作業、イベント運営などさまざまなシーンで活躍し、高齢化の著しい明舞団地に少しずつ変化をもたらしています。運用開始の翌年には、自治会の副会長を学生が務めるなど、画期的な試みも行われました。

みんなで学生をかわいがり、
地域活動が前より盛んになった

シェアハウス運用開始から8年。入居中の学生が10名を超える年もあり、団地内では、学生の存在が定着してきました。学生が入居する棟の自治会長からは、「たった一人の学生が入居するだけでここまで変化があるとは」と、驚きの声があがっています。この取り組みを行うことで、団地内はどのように変わったのでしょうか。

注目すべき変化は、自治会活動がこれまでより盛んになった点。住民の大半を高齢者が占め、単身世帯も多い中、積極的に自治会活動を行う学生は住民たちにすっかりかわいがられ、マスコット的存在に。これまで自治会活動に参加しなかった住民も参加するようになったそうです。

学生入居者が、地元の敬老会の手伝いを行いました

また、「住居のバリアフリー化」について研究する入居学生が、高齢者の住まいを訪問し、バリアフリーについて調査を行うことでコミュニケーションの機会が増えるなど、学生を受け入れるからこその効果も得られています。

学生にも多くのメリット
将来につながる体験が得られる

このシェアハウスの取り組みは、学生にとっても利点がたくさん。安い家賃で住めるだけでなく、自治会の人たちが日々の生活を見守ってくれたり、時には住民から不要な生活家電をもらい受けたりと、親元を離れて不安もある中、近隣住民に支えられながらの生活を送っています。

実際に入居していた学生からは、「団地の方が温かく迎えてくださり、第2のお母さん、おばあちゃん、お父さん、おじいちゃんがたくさんいる」という声も。

また、「地域のイベントを主催したり司会を務めたりと、自分が主役になれる活動ができた」と、学校では味わえないような、自身の活躍の機会が多いことも、大きな魅力になっているようです。

団地のイベント「明舞祭」での出店や、運営の手伝いも行います

さらには、「高齢化の問題に直に触れることができた」「明舞の抱える課題は他の地域の課題にもつながるので、明舞を参考にして他の地域で活かしたい」など、入居学生の多くは明舞団地での暮らしを将来の自身の活動に活かしていきたいと考えています

入居後は半年に一度、活動報告を兼ねた学生同士の交流の機会も設けています。

入居募集は毎年実施中
留学生も加わり、今後の展開に期待

このように、住民や学生の声を見てみると、明舞団地における学生シェアハウスは、空き住戸を活用した地域活性の取り組みとして、小規模ではあるものの、とても効果的であると感じられます。

もちろんいい面ばかりではなく、学生と高齢住民の生活時間帯の違いから起こる騒音問題などの課題もあります。しかし、空き住戸対策と同時に、高齢化対策や地域活性化を実現できるこの取り組みは、明舞団地内で拡大・発展させたり、他の団地でも応用させたりと、今後の展開に大いに期待できそうです。

明舞団地内・東谷公園でのプレイパークイベントでは、竹を使ったおもちゃづくりのお手伝い。現在は、留学生の入居者も活躍しています。

入居者の学年に条件はなく、中には大学院生の入居者も。毎年募集をしているので、学生のみなさんはぜひ一度、説明会に参加してみてはいかがでしょうか。

※学生シェアハウスの募集案内は、当サイトにて随時掲載しています。

<ライター:村崎 恭子>

 

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